命と向き合うNICU(新生児集中治療室)で繋がる環

私も低出生体重児(未熟児)の母親でありNICU(新生児集中治療室)で息子が入院していた頃、唯一コミュニケーションを取っていたのは看護師さんでした。閉ざされたNICUという空間の中で辛い気持ちや嬉しい気持ちを受け止めてもらえ誰かに話すことで自分自身に重くのしかかる空気を払拭していました。

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私は超低出生体重児(超未熟児)の母親です

甲斐甲斐しく赤ちゃんたちの世話をしてくれる看護師さんたちにふと気になってどうしてNICUの看護師を選んだのかと尋ねたことがあります。私はもともと人となりを知りたい欲求がありまして、ましてNICUという特殊とも思える勤務を望むのはそれなりの理由があるんじゃないかと思ったわけです。

そして、その興味は医師へと移りNICUを志した理由を教えてもらいました。その内容は記しませんが、先生や看護師さんたちは威張ることもその知識をひけらかすこともなく患者家族に寄り添おうとしてくれているのがわかって、その志が高くて尊敬と共にそのような人たちに我が子を診てもらえたことは本当にありがたいことです。

この場所であなたの名前を呼んだ

 

この場所であなたの名前を呼んだの感想

さて、本題に戻しますね。また、書籍の話なんですけど。実はNICUに通っていた頃に何度も読んで励まされた本もあるんですけど、、それはまた別の機会に。最近、NICU関連書籍が連続的に発売されているので先に新刊で読んだホットな感想を冷めないうちに残しておこうと思います。

今回の書籍「この場所であなたの名前を呼んだ」は、kindleのおすすめに上がってきて出会いました。今回はネタバレなど何の情報も得ずに衝動的にポチりました。でもあらすじは読みましたけどね。私、大概ネタバレやプロローグを先に読んじゃうタイプ(笑)

  • ▼先にストーリーを読みたい方

講談社BOOKクラブ|著・加藤千恵「この場所であなたの名前を呼んだ」

このあらすじを見て人となりが大好きな私が「この場所であなたの名前を呼んだ」を読まないわけがありません。これは、医師、看護師、臨床心理士、清掃員などNICU(新生児集中治療室)に関わる7人の物語で、ひとりの赤ちゃんの命を中心にストーリー展開されていきます。

その赤ちゃんは、18トリソミーで生まれた女の子。妊娠から出産、小さな命が天寿を全うするまで丁寧に描かれています。

赤ちゃんを妊娠した喜びから18トリソミーの診断、そして赤ちゃんを受け入れる覚悟。それから夫婦間の考えの違い、親としての成長が具に描かれています。

さらにNICUの情景表現も細かく「NICUは騒がしい」とあったのはよく取材されているなと感心しました。実体験からなの?

赤ちゃんの名前を決めるところが好き。名前、大事ですよね。私も必死に考えました。そういえば、以前に早産児に多い名前って聞いたことあるなぁ。

「心ちゃん」

夫婦の考えや想いがいっぱい詰まっていて可愛くて大好きが伝わってくる素敵な名前が贈られました。

全体的にどの話も淡々と進んでいきますが、心ちゃんのお話はこの「この場所であなたの名前を呼んだ」のメインストーリーとしてぐっとくるものがありました。ぜひ読んでみて下さい!

NICUで過ごす家族にとっては子どもの「死」は身近にあって多くの患者家族がその恐怖を胸の内に収めていると思います。私たち親はそれを決して口には出さないけど静かに少しずつ自分の中に浸食していく様は何とも言葉では言い表せないほどの苦しみです。

読んでいてその時の感情が溢れ出てくるようで胸が苦しくなりました。どうしても自分自身と重ねてしまい心ちゃんが自分の子のようで最期を迎える姿を受け入れたくありませんでした。そして最後の一文には涙が出るし、親としては悲痛で複雑な気持ちになってしまいました。色んなことを想像するとどう受け止めても子どもの死を乗り越えることは難しいよ。怖い。

これまで何度となく言ってますが、赤ちゃんが無事に生まれてくることは当たり前ではなく奇跡なんですよ。

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予定日より早く赤ちゃんが生まれるとどうなるの

この心ちゃんの命から医師、看護師などNICUに関わるスタッフたちの物語が進みます。

医療者が患者の死に向き合うことは多くありそうですが、この物語の舞台は、重篤な患者が入院することは少ないNICUで、近隣に大規模なNICUがありハイリスク妊婦もそちらに回されていることから赤ちゃんが亡くなる事例は少ないのかなと想像します。だから心ちゃんの死はNICUに関わる医師や看護師、スタッフにより大きな感情として残り続けているのだと思います。

NICUでベビー服を着た低出生体重児(未熟児)の治療

冒頭でひとつの場面展開があるのですが、この場面が伏線になっていて後半の物語で一つずつ回収されていきます。こういうの好きだけど苦手なやつ。私は、本を読むとき登場人物の名前をちゃんと覚える方ではないんです。

話が繋がっていて尚且つ主要人物が多いのにも関わらず名前を覚えないまま読み進めたので、案の定、この人は誰だっけとなってしまい何度も冒頭に戻ることになってしまいました。実はこの文章を書きながらも本を読み直しています。。

それぞれの話をひとつずつ紹介してしまうととんでもなく長くなってしまうので割愛しますが、1点だけ。新人の看護師さんが赤ちゃんの面会にこないご家族に憤りを感じる場面があるのですが、これは患者家族側の視点で読むと考え深いなと思いました。

面会に毎日来られる親ばかりではないですよね。それぞれに事情を抱えている。私だってそうでした。始めは毎日面会に行っていましたが、上の子がいるとそういうわけにもいかなくなります。

その時の私は、体は行こうとしているのに気持ちが行けなくなる感覚でした。頭では何も考えずにいつものルーティーンで冷凍された母乳パックや息子の着替えなどをカバンに詰め込んで病院に向かう準備はしているんです。

でも、いざ家を出ようとするとブレーキをかける自分がいるんです。準備が終わり家でおもちゃで遊びたがっている小さな上の子の手を握った時に心の中で何かがプツンと切れてしまったような感覚に陥りました。

きっと精神的にもいっぱいいっぱいだったんだと思います。毎日気を張っていて上の子がいることで事がうまく運ばないこともありどうにも立ち行かない現実から逃げようとしていたのかな。どうしたらいいのか自分でも分からない状態だったんだと思います。

この新人看護師さんから見たら可愛い赤ちゃんがママを待っているのに何で来ないの。ほかのママはちゃんと来ているのに子供が可愛くないのかと思ってしまうのは当然です。NICUはその患者家族の生活の一部分しか切り取っていないんですから。

ファミリーケアって何だろうってずっと思ってました。押し付けや思い込みなんじゃないだろうかと思うこともありました。そういう不信のようなモヤモヤを抱えているご家族も結構いるんですよね。まだまだ医療者と患者家族には乖離があると思っています。そういう一例を感じられる場面でしたね。

読み手によって共感ポイントが変わってくるところが面白いと思います。私は、担当医の物語はちょっとよくわからなかった(笑)

NICUで過ごした日々はもう遠い記憶になってきていますが、息子の命のために様々な方に手を貸してもらっていたことはわかっているつもりです。

それでもなんとなくNICUで働く人たちにとっては赤ちゃんの治療は当たり前の日々で業務になっているのかと思っていましたが、ロボットじゃないんですよね。やっぱりそれぞれに感情があってその人の生活や人生に影響しているのかなと「この場所であなたの名前を呼んだ」を通して感じることができました。

題材となっている命と向き合うことはどの立場であっても並大抵ではないです。NICUでの救命率が高いからといってもNICUで治療を受ければ必ず命が助かるわけではない。

それでも、早産や生まれつきの病気を持つ赤ちゃんの命を懸命に守ろうとしてくれる人たちがいて、そうして子どもたちも私たち親も生かされているんです。

久しぶりに主治医や担当の看護師さんに会いたくなりました。

 

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[ 命と向き合うNICU(新生児集中治療室)で繋がる環 ]NICU/GCUのこと2021/06/25 13:06